はじめに
人間の体には循環を行うためにいくつかの体液が存在します。一つ目が皆さんもよく知る血液、二つ目がリンパ液、そして三つ目が脳脊髄液になります。
内臓の機能を高めるためには身体中をめぐる体液の循環を良くすることがとても重要になります。
しかし、現代ではストレスを抱えている方が多く、このような状態になることで呼吸が浅くなり、みぞおちにある横隔膜の機能が低下しやすい状態となります。
すると
みぞおちが硬い感じがする
みぞおちを押すと痛い
お腹がすっきりしない
といった症状を伴いやすくなります。
そこで今回はお腹の循環を高めることでその先にある内臓機能を活性化する方法についてご紹介したいと思います。
みぞおちには何があるのか
この部位には腹膜や腹直筋が存在します。そして、そのさらに奥には腹腔神経叢という神経の塊が存在します。この神経は胃や肝臓の後方に位置し、腹部にある内臓機能を担っています。
参照:ネッター解剖学アトラス原書第4版図166
みぞおちにはたくさんの筋肉や臓器が存在します。みぞおち周辺にある組織の記事は他にもありますので、興味もある方はぜひご覧ください。
みぞおちが痛くなる原因
みぞおちにある筋肉は主に腹直筋や腹膜、さらに、呼吸にとても大切な横隔膜が存在します。そのため、このような筋肉が硬くなることで圧迫した時にみぞおちに不快感や痛みを伴うことがあります。
みぞおちにある内臓は主に胃になります。そのため、ストレスや暴飲暴食、飲酒などによって消化器に負担がかかることでみぞおちに痛みを伴うことがあります。
このようにみぞおちに硬さや痛みが生じることは組織の柔軟性が落ち、体液の循環が滞っているサインになります。
血管の長さ
人の身体には血管が張り巡らされています。一人分の血管をすべてつなげた長さはどれくらいになると思いますか?実は約10万㎞といわれています。これは地球の約2周半の長さに相当します。その長い距離を絶えず血液が流れていると思うととてもすごいことだと思います。
血液の役割
血液はまさに身体を支え、あらゆる病気を防ぐための大きな力を持っています。
今回は血管の中でも主に上腹部にある内臓に血液を供給している「腹腔動脈」についてお伝えしていきたいと思います。
腹腔動脈の特徴
腹大動脈から分岐した腹腔動脈の役割は主に上腹部の臓器に栄養を送る血管になります。供給する場所は肝臓、胆嚢、胃、膵臓、脾臓になります。
そして腹大動脈には腹腔神経叢が絡みつくように集まり、それらは胃や肝臓、胆嚢、膵臓、脾臓にも神経投射されます。そのため、腹腔神経叢は上腹部にある内臓機能を高めるとても重要な神経になります。
腹腔神経叢の位置
腹腔神経叢にアプローチするときはまずその位置を正確に触診する必要があります。
腹腔神経叢に触れるには腰椎の一番(L1の高さ)を目安にします。
参照:オステオパシーの内臓マニピュレーション図3-5
腰椎は全部で5つ存在します。その中で腰椎の一番(Ⅼ1)は一番上にある腰椎を指します。
この腰椎の一番(Ⅼ1)の高さとみぞおちの高さがだいたい同じ高さになります。
腰椎は腰部を形成する大切な関節になります。しかし、この腰椎に問題が生じることで腰痛のリスクが高まりやすくなります。そのようなことでお困りの方はぜひこちらの記事もご覧ください。
横隔膜のリリース法
腹腔神経叢は横隔膜に張り付くようにして走行しています。そのため、横隔膜の滑走性を引き出すことで腹腔神経叢の滑走性も高めることができます。
まず肋骨下部に手を引っ掛けます。
そうしたら下部肋骨を左右に広げるようにし、その状態で足を左右に倒すように動かします。このエクササイズを左右20回ずつ行います。
腹腔神経叢へのアプローチ方法
腹腔神経叢に触れるにはまず腰椎の一番(L1の高さ)に手を置きます。そして圧迫する強さは動脈の拍動が感じる強さまで圧迫をします。腹大動脈の拍動を感じたらそこで手を止めゆっくり深呼吸をしてもらいます。
拍動を感じる深さまで圧が届いていれば腹大動脈に分布する腹腔神経叢にも刺激が入っているはずです。そうすることで神経支配を受ける上腹部の臓器(胃、肝臓、膵臓、脾臓など)に刺激が入り、内臓の機能が高まりやすくなります。
※しかし、大動脈瘤や高血圧による血管抵抗性が低い方、悪性腫瘍などが既往にある方は実施を控えてください。
最後に
普段食欲がわかない方などは内臓の機能が落ちている可能性があります。そんな方には今日ご紹介した方法で内臓の機能を高めてもらうことでそういった不調を軽減できるのではないかと思います。特に病院に入院している方などはそのような不調の方がとても多いと思います。リハビリと食事は切っても切り離すことはできないと思いますので、その方の身体のベースを少しでも上げるための方法として使っていただけたらと思います。
最後に注意点ですが、普段臨床で腹部を触るとき動脈の拍動が分かりやすい方と分かりにくい方がいるかと思います。分かりやすい方は血圧の状態などもしっかり確認したうえで行ってください。
本日もご覧いただきありがとうございました。
コメント