はじめに
私の職場にはいろいろな部位に痛みを抱えた方がお見えになります。その中でも特に厄介で嫌な痛みの部位として代表的なのが『股関節』になります。
股関節が痛くて日常生活がすごく苦労してる人が多いよね。
股関節は体重がとてもかかる部位だから本当につらい痛みだよね。今回はそのような痛みの対処法についても話していくよ。
この股関節の痛みはズキンと身体の芯を刺すような嫌な痛みでこの部位が痛くなることで日常生活に大きな影響を与えます。
そこで今回はこの股関節の痛みを少しでも和らげるための方法についてお伝えしたいと思います。
股関節が痛い方の特徴
股関節が痛い方の特徴はほとんどの場合で通常の適切な股関節の位置から内側に捻れている(内旋)ことが多いです。股関節が内側に捻じれてしまう原因として以下のようなことが挙げられます。
〇 器質的に股関節に問題がある場合
〇 大腿内側の滑走性低下
〇 骨盤内の滑走性低下
股関節が反対に外側に捻じれている方で多くみられるのが『がに股』になります。興味のある方はぜひこちらの記事もご覧ください。
股関節自体に問題があるというのはどういうことなのか
股関節自体に問題がある場合によく聞くのが『臼蓋形成不全』という状態です。
臼蓋形成不全とは骨盤側にある股関節がはまりこむくぼみが浅い状態のことをいいます。
そのため、股関節の安定性が下がり、股関節に負担がかかりやすい状態となります。
臼蓋形成不全をみるための評価項目としてよく使われるのがCE角とSharp角があります。
CE角とは
CE角とは
大腿骨の骨頭中心に下した垂線と大腿骨の骨頭中心と寛骨臼外側上縁を結んだ線のなす角度。
CE角が20度以下の場合臼蓋が浅いと判断されます。
Sharp角とは
Sharp角とは
左右の涙痕を結んだ線と涙痕と寛骨臼外側上縁を結んだ線のなす角度。
Sharp角が45度以上の場合臼蓋が浅いと判断されます。
なぜ股関節が痛くなるのか
臼蓋が浅いと股関節が臼蓋に包まれている割合が減り関節自体の安定性が下がるため、それを補おうとして無意識に股関節を内旋もしくは骨盤を前傾させ骨頭の被覆率を高めようとします。
この状態が長期的に続くと股関節の骨頭位置が崩れ股関節自体への負担が大きくなります。すると結果的に股関節の痛みを伴いやすくなります。
内股の方は股関節周りの動きが悪くなり、むくみなどが出やすい状態となります。そのような状態でお困りの方はぜひこちらの記事もご覧ください。
股関節に負担のかかりやすい2パターンの状態
股関節に痛みを伴っている方の多くは骨盤内もしくは股関節内側の組織の滑走性が低下している方をよくみます。骨盤内・股関節内側にはたくさんの筋肉が存在します。
その中で私が患者を診る中でよく滑走性が悪いと感じる筋肉は以下の筋肉になります。
・腸骨筋
・恥骨筋
・長内転筋
骨盤内の滑走性が悪い
まず骨盤内の滑走性下がっている方は骨盤の左右のASIS間の距離が縮まり、骨盤の前面の開きが不十分になっている方が多いです。
そして骨盤の腸骨稜に付着している腸骨筋が硬くなっている場合が多いです。
腸骨筋が硬くなると骨盤が前傾し、それと連動して股関節が内側に捻じれやすい(内旋)状態となります。すると股関節と骨盤の協調的な動きが阻害され、結果的に股関節への負担が増加してしまいます。
大腿内側の滑走性が悪い
次に大腿内側の滑走性が下がっている方は恥骨の動きが悪くなっている方が多いです。
恥骨は恥骨結合という組織によって左右の恥骨が連結してできています。恥骨自体にはそれほど目立った動きはありませんが、それでも骨盤を動かす際にわずかに動きを伴います。
実はこのわずかな動きがとても大切で、この動きが骨盤-股関節の協調的な動きを引き出すのに欠かせない動きになります。
特に恥骨が硬くなると鼠径部の広がりが阻害され、股関節が内側に捻れやすい(内旋)状態となります。そのため、この恥骨に付着する恥骨筋や長内転筋が硬くなると骨盤-股関節の動きを阻害する要因となります。
股関節が内側に捻じれると生じる問題
では先ほどから何度も申し上げているように股関節が内側に捻じれるといったい何が良くないのでしょうか。
これは私の私見になりますが、内側に捻じれることによって生じる一番の大きな問題は股関節の外側の捻じれ(外旋)が制限されることにあります。
そして、私が臨床で股関節疾患の方をみるときに股関節の外旋が制限されることによって起こる最も大きな問題として挙げられるのが『殿筋群の不活化』です。
この殿筋というのは大殿筋・中殿筋・小殿筋のことを指します。これら殿筋群は骨盤-股関節の安定性を高める効果があります。しかし、殿筋群が不活化することによって骨盤-股関節の安定性が落ち、結果的に以下のような状態に陥りやすくなります。
〇大腿部にある筋肉の負担増加
〇股関節への負担の増加
〇立ち上がり、立位、歩行時の疼痛増悪
お尻の筋肉が弱くなることで太ももの筋肉に負担がかかりやすい状態となります。すると、太ももが太くなりやすくなります。そのようなことでお困りの方はぜひこちらの記事もご覧ください。
お尻に力が入るか試してみよう
股関節が痛いという方、試しにお尻に力をいれてみてください。 お尻の力の入れ方は立った状態で股関節を外側に捻じりながらお尻を締めるようにしてみてください。
この時にお尻がしっかりと硬くなり力が入る方はまだ股関節の動きが比較的保たれている方が多いと思います。
しかし、お尻に力を入れようとしても
どうやって力を入れていいのかわからない
お尻をキュッと締める感覚がわからない
反対側のお尻より明らからにお尻が小さい
という方は股関節の外旋という可動域が低下し殿部の力が入りずらい状況になっている可能性があります。
これは股関節が内側に捻れた状態(内旋位)となっていることで、殿部の力を発揮するための外旋という動きが制限されたことにより起こる現象となります。
大腿内側の動きを引き出す方法
骨盤内(腸骨筋)リリース法
腸骨筋は骨盤の一部でもある腸骨の内側に付着している筋肉です。そのため、骨盤の中に指を挿入しマッサージをしていきます。
1.まず骨盤のランドマークとしてよく使うASIS(骨盤前方にある出っ張った部分)に触れていきま す。
2.ASISをみつけたらそのすぐ内側に指をスライドすると指が骨盤内に沈む感覚がわかると思いま す。そうしたらその部位や腸骨の内側をほぐすようにゆっくりマッサージをします。このとき 膝を立てた状態でマッサージした方が緊張が緩みやすくなり、骨盤内をほぐしやすくなるので おすすめです。
恥骨周囲(長内転筋・恥骨筋)リリース法
1.長内転筋は股関節をやや外に広げた状態にすると大腿の内側に浮き出てくる筋肉になります。
2.長内転筋の位置がわかったら直接筋肉をつまみ、上下左右にゆっくり動かしながらほぐしてい きます。
3.恥骨筋のマッサージは先ほどつまんだ長内転筋のすぐ上方にある筋肉になります。この筋肉も 長内転筋と同じように直接つまんで上下左右に動かしながらほぐしていきます。
臀部のトレーニング
股関節の安定性を高めるためのエクササイズをご紹介したいと思います。
ここでのポイントは痛みの出ない範囲で運動を行うということです。痛みを伴わない方法としておすすめなのが等尺性運動になります。等尺性運動とは関節の動きを伴わない状態で筋肉の収縮を入れる運動になります。
このエクササイズの最大の目的は大腿内側の緊張を緩めつつ、お尻の力を使えるようになるところです。股関節に痛みのある方は大腿内側の筋肉の緊張を緩めることができないことで股関節の外旋をうまく引き出すことができません。
そのため、等尺性収縮を利用して外側の筋肉に常に刺激を入れることによって相反的に大腿内側の筋肉の緊張を緩めることができます。この状態でブリッジなどを行うことで大腿内側の緊張を緩めながらお尻のトレーニングが可能になります。
股関節外転・外旋運動(痛みのない範囲)
■やり方 膝にバンドを巻き、バンドを外側に引っ張るように力を入れます。このとき外側に引っ張る範囲は股関節が痛くない範囲で行います。 ■時間 引っ張ったところで20秒間キープします。
■やり方 バンドが家にない場合は壁を利用して行ってみてください。痛い側の股関節を壁側として壁を外側に押すようにして力を入れます。
ブリッジ(痛みのない範囲)
ブリッジは本来お尻に力が入るエクササイズですが、股関節が痛い方は内ももの力を無理に使い、お尻の力が効率よく高まらないことがよくあります。
そのため、内ももの力を抜きながらお尻に力が入るようにすることで股関節の安定性が高まりやすくなります。
■やり方 バンドを足に巻き股関節が痛くない範囲でバンドを外側に引っ張りながらお尻上げを行います。 ■回数 20回を目標に行います。
■やり方 バンドが家にない場合は痛い方の股関節を壁側として壁を外側に押しながらお尻上げを行います。
終わりに
皆さんいかがでしたでしょうか。股関節の痛みは本当に嫌な痛みです。しかし、自分では何をすればよいのかわからないという方がほどんどだと思います。そこで、今回の記事を読んでいただき、少しでも自分の身体の特徴と近いものがあったという方は一度試してもらえたらと思います。
股関節が痛い方の気を付ける点は『無理をしない』ということです。ただがむしゃらに股関節が痛いのにも関わらず動かしてしまうと痛みが余計に強くなってしまうことがありますので、まずは股関節の痛みのない範囲でゆっくり行っていただけたらと思います。
今後も皆さんのお役に立つ情報を発信していきたいと思いますので、興味のある方はぜひご覧ください。
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