ピラティスのロールダウンができない原因とは?現役理学療法士が解説する改善のコツ

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〜身体の癖と意識のズレを整えるポイント〜

はじめに

ピラティスの基本動作のひとつに「ロールダウン(Roll Down)」があります。

シンプルに見える動きですが、「なぜかスムーズにできない」「背中が丸まらない」など、悩む方がとても多いエクササイズでもあります。

本記事では、現役理学療法士とストットピラティス認定Fullインストラクターの肩書を持つ私がロールダウンができない原因を身体の構造面・動作面・意識面の3方向から解説し、改善のためのポイントをお伝えします。

1. ロールダウンとは?

ロールダウンは、背骨を一つひとつ順に動かして体幹をコントロールしながら背骨の柔軟性や腹筋の安定性を養うエクササイズです。

主に立った状態やマット上で座った姿勢からゆっくり背骨を丸くしながら動かしていく動きとして行われます。

この動作には以下の要素が必要です。

背骨を分節的に動かすコントロール力

骨盤の適切な傾き

腹部の引き込み(ドローイン)

股関節・ハムストリングスの柔軟性

呼吸のコントロール

これらのどれかが崩れると、スムーズなロールダウンはできません。

2. ロールダウンができない主な原因

① 腹筋の「引き込み」不足

ロールダウンで最も多いのが、腹筋の使い方がうまくいっていないケースです。

特に「腹直筋だけで引き起こそうとして腰が反ってしまう」「お腹を前に押し出してしまう」というパターンがよく見られます。

ロールダウンでは、腹筋を“縮める”よりも“背骨を支えるように引き込む”意識が重要です。

表層の腹直筋ではなく、**深層の腹横筋**を使って、お腹と背中を近づけるようなイメージでお腹を薄くするコントロールしましょう。

ポイント

おへそを背骨に近づけるように意識し、息を吐きながら「お腹がぺたんこになる感覚」を作ることで体幹深層筋のコントロールが高まります。

② 骨盤の動きが固い(後傾ができない)

ロールダウンでは、骨盤を後ろに傾ける動きが必要不可欠です。

しかし、多くの方がこの骨盤の動きがうまくできず、腰部の丸みが減少してしまうことがあります。

特に、デスクワークなどで常に骨盤が前傾(反り腰)気味の人は、後傾方向への動きが苦手です。

骨盤の後傾ができないと、寝た状態で行うロールダウンにおいて背骨を分節的に動かせず、「ごろん」と一気に倒れるロールダウンになってしまいます。

チェック方法

仰向けで寝た状態で骨盤を後傾(腰を床に押し付けるように)できるか確認してみましょう。

腰とマットの間が埋まるような感覚があればOK。浮いてしまう場合は骨盤の動きの練習が必要です。

③ ハムストリングスの柔軟性不足

太ももの裏側にあるハムストリングスが硬いと、骨盤の動きが制限されます。

ロールダウン中に脚が突っ張ってしまったり、坐骨が床から浮いてしまう方は、このパターンが多いです。

ハムストリングスが硬いと、骨盤を後傾させようとしたときに太ももの裏が抵抗してしまい、骨盤が動かず背骨だけで無理に丸めようとするため、腰を痛める原因にもなります。するとロールダウンをした時に足部の直上に下肢が位置せず骨盤が後ろに引けてしまうような状態に陥りやすくなります。

改善ポイント

ロールダウン前に、軽くハムストリングスをストレッチします。そしてロールダウン時はまずは膝を軽く曲げて行い、背骨を丸めることを優先して練習しましょう。

④ 背骨の可動性の低下

「背骨を一つずつ動かす」というロールダウンの基本ができない場合、原因は背骨そのものの硬さにあります。

特に腰椎が硬い人は、腰が平らな状態で胸椎ばかりが動いてしまい、「背中が丸まるだけ」「首だけ下がる」などの偏った動きになります。

この場合、胸椎や骨盤周囲のモビリティを高めることが大切です。

猫のポーズ(キャット&カウ)を行うなど背骨を分節的に動かす練習を取り入れていきましょう。

⑤ 呼吸の使い方が逆になっている

ロールダウンで呼吸が止まってしまったり、吸うタイミング・吐くタイミングが逆になると、体幹の安定が崩れます。

特に「息を吸いながら下がってしまう」人は、お腹が膨らんで腰が反りやすくなります。

正しい呼吸のタイミング:

立位で準備 → 吸って背筋を伸ばし吐きながらロールダウン開始 → 吐き続けながら背骨を丸めていき下まで下ろす → 下で一度吸って吐きながら背骨をニュートラルまで戻す

「吐く=腹部の収縮」なので、吐く息で腹筋が自然に働き、背骨をコントロールしやすくなります。

⑥ 頸部・肩周りの緊張

ロールダウンをするときに肩や首に力が入ってしまう人も多いです。

肩がすくむ・顎が上がる・首が痛いという場合、背骨の動きよりも上半身の筋肉で支えようとしている証拠です。

首が硬いとロールダウン時に後頚部が胸椎の延長線上に位置せず頭頚部が高い位置でセットされやすくなります。

対策

目線をおへそに向ける(顎を軽く引く)

肩を耳から遠ざけるように意識

手を前に伸ばしながら“腕で支える”のではなく、“腕が体幹から生えている感覚”を持つ

3. できない人がやるべき準備エクササイズ

①キャット&カウ(四つ這いで背骨を動かす)

四つ這い姿勢で背骨の動きを感じる練習です。

まず息を吐きお腹の力を感じながら脊柱を丸くし天井に向かって押し上げる様に動かします。

次に息を吸いながら胸を開きせぼねをゆっくりと反るように動かしていきます。

呼吸と連動させて「丸める・伸ばす」を繰り返すことで、胸椎や腰椎の可動性を高めます。

ポイント

吐く息で背骨を天井方向へ丸め、吸う息で背骨を伸ばすイメージで行います。肩や腰だけで動かさず、背骨全体の動きを感じながら行うようにします。

②ハーフロールダウン(部分動作練習)

完全に寝るまで行かず、途中で止めるハーフロールダウンは、安全に腹筋と背骨のコントロールを鍛えるのに効果的です。

膝を軽く曲げた状態で坐骨で地面を踏み背骨を高く伸ばしながら床に座ります。また手にフィットネスサークルなどをもって行うとよりお腹の力を感じることができます。

吐きながら骨盤を後傾し、背中を丸めて少し後ろへ下がる 腹部の引き込みを感じながらキープ(3呼吸ほど) 吸いながら起き上がるを繰り返します。

無理に下まで行かず、“動ける範囲でコントロールする”ことがポイントです。

私がおすすめするフィットネスサークルはBalanced Body製のものになります。とても使い心地が良くサークルが一つあるだけでとても多くのエクササイズを行うことができます。ぜひご自宅に一つ用意することをおすすめします。

4. ロールダウンができるようになるための意識づけ

「背骨を順番に」ではなく「骨盤から」動かす意識を持つ

脚の力を抜き、体幹で支える

呼吸と動きをセットにする

スピードを落としてコントロールを意識する

この4つを意識するだけで、ロールダウンの質は劇的に変わります。

特に「ゆっくり動く」ことは、筋力よりも“身体のつながり”を育てる大切な練習です。

5. まとめ

ロールダウンができない原因は「筋力不足」だけではありません。

骨盤が動かない 背骨が硬い 呼吸が浅い 身体の意識がずれている

こうした小さな要素の積み重ねが、動きのスムーズさを妨げています。

焦らず、身体の仕組みを理解しながら少しずつコントロールを育てていくことが、ロールダウン上達への最短ルートです。

「できない」ではなく「動きを感じられるようになってきた」と捉えることが、ピラティスの本質的な成長につながります。

理学療法士として回復期病院6年、整形外科クリニック8年勤務し、日々多くの方のリハビリや身体の不調に向き合ってきました。

その中で「予防・セルフケア」の大切さを実感し、STOTT  PILATES認定Fullインストラクターの資格を取得し理学療法士をしながらピラティスインストラクターとしても9年活動しております。

今では内臓ストレッチマスタートレーナー、BODY  CONTROL  PILATES認定産前・産後インストラクター、pifilAtes認定インストラクターとしても活動し身体の内側から整えるケアもお伝えしております。

このブログは医療とピラティス両方の視点から『身体が変わるヒント』をお届けしています。

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