いつまでも走れる身体をつくるための片脚立位安定性チェック&5つの誤りパターン

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【最終更新日:2025年10月20日】

はじめに

年齢を重ねるごとに「少し早歩きすると息が上がる」「小走りができなくなった」と感じることはありませんか?実はこの“走りにくさ”は、ただ筋力が落ちているからというだけではなく、「片脚で体重を支える能力」、そして“片脚立位での身体の安定性”が大きく関与していることがあります。

例えば横断歩道を急いで渡ろうとするときなんかにそう感じることがあるのではないでしょうか。高齢になるにつれ歩行機能は低下しますが、それ以上に走行機能はもっと低下している方が多いと思います。

質問する人
質問する人

なんか学生の時よりも走るとすぐに疲れるようになった気がするな。

内臓小僧
内臓小僧

普段から身体を動かしていないと若いときでも走行能力は低下するんだよ。

人間が移動をするとき、歩行だけでなく走行という動作にもなりますが、走行時の特徴として「常に片脚で支持している時間がある」という点が挙げられます。 

つまり「片脚立位が不安定=走行能力(小走り・ダッシュなど)が低下しやすい」という視点が見えてきます。

走る・早く歩く・スムーズな移動がしたい方、転倒や脚・腰の負担を軽くしたい方にとって、日常生活の質を上げるヒントになる内容です。

本記事では、理学療法士の視点から「片脚立位が不安定な人に共通する5つの誤った立ち方(パターン)」「自分の片脚立位を知るためのチェック方法」「改善・強化のためにすぐできる対策」を体系的に解説します。

なぜ「片脚立位の安定性」が“走れる身体”に不可欠なのか

「軸の安定性」とは?

身体の上半身と下半身をつなぐ“体幹-骨盤-下肢”のラインがブレずに支持できている状態を「軸が安定している」と言えます。

軸が安定していれば、動作中や長時間の姿勢保持時にも関節・筋肉にかかる負担が分散され、効率良く動けます。逆に軸がブレると、動きにくい関節や動き過ぎる関節が生まれ、どこかに過度な負担が集中する危険があります。 

片脚立位安定性が低下すると起こる連鎖

片脚で立てない・軸がブレるという状態になると、以下のような影響が起こりやすくなります:

膝・股関節・足関節の負荷増加

歩行・走行時にどこか一部に過剰な筋・靭帯負担がかかる

歩幅が狭くなる/着地脚をかばう癖が出る

移動が億劫になる → さらに筋力・バランスが衰えるという悪循環

そのため片脚立位の安定性を高める」ことは、ただ筋力をつけるというよりも、「動きに強い身体軸をつくる」ことに他なりません。

日常生活で“無意識に”使っている片脚支持の場面

私たちは特別な運動をしなくても、日常生活の中で“片脚立位”を使う場面があります。例えば:

ズボンを履くとき片脚を上げて支える

洗濯物を干す際、敷居をまたぐなど片脚支持になる

足を汚さないようにつま先立ちになったり、片脚で踏ん張ったりする

このような“無意識の片脚支持”をスムーズにできていないと、日常動作での負担が増え、疲れやすさ・動作の際の不安感・転倒リスクなどにつながる可能性があります。

つまり、「スポーツをしないから片脚支持は関係ない」という考えは誤りです。移動・起立・姿勢変換のすべてにこの機能は関わっています。

ご自身が「片脚で立つシーン」を思い返してみて、どれくらい支えられていたか意識してみましょう。

歩行 vs 走行の違いが示す“片脚支持”の重要性

多くの人が「歩く」と「走る」の違いをスピードだと捉えがちですが、実は決定的な違いは“接地脚の数と時間”にあります。歩行では両脚が接地している時間がある一方、走行では終始片脚で支持している時間があると言われています。 

歩くのと走るので決定的に違うのはスピードではなく左右の足の接地の仕方になります。

つまり、「片脚で安定して立てない=走行時の支持能力が低い」可能性があり、それが「走れない」「小走りがきつい」「歩きが重く感じる」といった現象につながります。

歩行は両脚が地面に接地するタイミングがある

走行は常に片脚での接地しかない

いつまでも走れる身体を作るには

冒頭でも述べましたが年齢が高くなるほど小走りができなくなる方が増えてきます。

するとちょっとした移動も車を使うことが増え、より一層下半身の力が衰えてしまいます。

そこでいつまでも走るために必要になる大事なポイントは片脚で体重を支持する能力を高めることにあります。

つまり片脚で安定して立てない方は走行能力が低下している可能性があります。

効率よく走るためには骨盤の位置がとても重要になります。興味のある方はぜひご覧ください。

リハビリでも使う片脚立位評価

片脚立位の評価は、運動器不安定症のリスクや転倒のリスクを判断するために活用されますが、これらを判断するための指標となるカットオフ値をご存知でしょうか。

片脚立位は、簡易的に測定できるため高齢者の身体機能の評価として幅広く活用されています。

そのためカットオフ値や平均値も様々なものが公表されています。そのなかでも私のような理学療法士が良く使用するものがこちらになります。

⑴開眼片脚立位では「15秒未満」で運動器不安定症のリスクが高まる

⑵閉眼片脚立位では「5秒以下」
 開眼片脚立位では「20秒以下」で転倒リスクが高まる
(参考文献:PTジャーナル 2009,9 高齢者の運動機能と理学療法)

一度片脚立ちが現時点でどのくらいできるのかぜひチャレンジしてみましょう。

自宅でできる正しい片脚立位のチェック方法

それでは一度片脚立ちをやってみましょう。

正しい片脚立ちのポイントはこちらになります。

・左右の肩の高さが同じ高さにあるか

・支持している側の足の直上に頭部の中心があるか

一度片脚立ちになったときにこの2つのポイントができているか確認してみましょう。

そして、この片脚立ちができると下半身と上半身の軸がつながり、関節の安定性が高まります

片脚立ちが安定しない人の代償動作

以下に、臨床でよく観察される「片脚立位が不安定な人に出る5つの典型パターン」を整理します。各パターンでは「どこが傾くか・何が原因か・どのような影響が出るか・対策の方向性」がセットになっています。

片脚立ちをする際に

筋力が弱い

関節の可動域に制限がある

身体のどこかに痛みがある

といった問題が生じた場合、正しい片脚立ちではなく誤った姿勢で片脚立ちをする可能性があります。

すると先程述べた片脚立位評価において、いくら定められた時間片脚立位が保持ができたとしても、正しくない片脚立位ではできない方と同様将来的に歩行や走行に影響を及ぼす可能性があると私は考えています。

そのため、正しくない片脚立ちのパターンを今からお伝えしたいと思います。自身の片脚立ちと比較してみてください。

支持した足と反対に身体が傾く

こちらは上半身が左に側屈した状態の片脚立位になります。

すると左側の体幹がつぶれてしまい下半身と上半身の軸のつながりが不安定な状態となります。

そしてそれを代償するために右の脇腹から大腿外側の負担が増加します。

これは右の股関節外側に付着する中殿筋が弱いことが影響しています。

支持した足と同側に身体が傾く

こちらは上半身が右に側屈した状態の片脚立位になります。図のが右股関節の位置になります。

すると右側の体幹が短縮し下半身と上半身のつながりが不安定な状態となります。また支持側の股関節に荷重がかかり過ぎてしまうため股関節の負担が増加します。

支持した側に身体が回旋する

こちらは身体を右に回旋(捻じる)した状態での片脚立位になります。

この片脚立位は骨盤を右に回旋することで右脚外側から殿部にある筋肉や靭帯の緊張を高め安定性を得ています。そのため、こちらの片脚立位は右脚外側から殿部にある筋肉に負担が増加します。

下半身が左右に動揺する 

こちらは片脚立位になったときに下半身が左右に動揺する状態です。動揺する原因としては下半身(股関節・膝関節・足関節)のどこかに不安定性があることが考えられます。こちらの場合も下半身の不安定性のある部分に負担がかかりやすい状態となります。

骨盤が外側にシフトする

こちらは支持する側の骨盤を過度に外側にシフトした片脚立位となります。

この片脚立位は骨盤を外側にシフトすることで股関節外側にある筋肉にもたれかかるようにして安定性を得ています。そのため、この片脚立位では股関節外側の筋肉に過度に負担がかかりやすい状態となります。

片脚立位が安定するための下半身と体幹の軸のつながりについてはこちらの記事にまとめてありますので、ぜひご覧ください。

自宅でできる片足立位保持の練習法

自身の片脚立ちの特徴を知ることは片脚でどのように身体を支えているのかが分かるということです。

つまり、歩行時や走行時の片脚立ちになるタイミングでどこに負担がかかっているのかを予想することができます。

普段から決まった部位に痛みがある、よくこの部位が疲れるという認識がある方はもしかして片脚の支え方が影響しているかもしれません。

そのような方は良い片脚立ちができるように練習してみましょう。

①壁から少し離れて立ち、片脚(右脚)で立つ。

②支持脚の真上に頭部の中心があるか、左右の肩の高さが揃っているかを確認。 支持脚の直上に頭部がある → 軸が保たれやすい。  肩の高さが崩れていたらバランスが取れていないサイン。

③15〜20秒保持してみて、どれだけ動揺するか観察。揺れが大きい・タイムが短い場合、改善の余地あり。

壁に近づいて「壁に手を軽く当てた状態」で同様に立ってみると、“軸を使う感覚”がつかみやすくなります。 反対脚(左脚)でも同じように行い、左右差を確認。いつも同じ脚で立っていないか意識するのも重要です。

このチェックで「どう立てているか」「どこに不安があるか」が見えてきます。結果を元に、上記の5つの誤りパターンどれに該当するかを照らし合わせてみましょう。

片脚スクワットは“片脚支持・走行安定”の指標

走行能力に必要な片脚支持の安定性を確かめる方法として片脚スクワットがあります。

「片脚スクワットができるかどうか」は、片脚での支持能力・走行能力を測るひとつの目安と言えます。 

「片脚スクワットができない・膝が内側に入る・ふらつきがある」という場合、片脚支持の安定性に不安があります。

片脚スクワットがしっかりできる方は現段階で片脚支持の安定性は保たれていると思います。

片脚スクワットができない、もしくはふらつきがあったり、膝が内側に入ってしまうという方は片脚支持に不安定性がある可能性があります。

まず胸の前に両手を置き、片脚立ちになります。

片脚立ちの状態で体幹を少し前傾させながら股関節と膝を曲げていきます。

片足スクワットの時につま先が同じ方向をしっかり向いているかを確認してみましょう。

膝がまっすぐなのか、内側なのか分かりにくいという方は膝にあるお皿がどっちを向いているのかをみることで膝の向きが分かると思います。

良い片脚立位:膝とつま先が同じ方向を向いている

悪い片脚立位:つま先に対して膝が内側を向いている

最後に

皆さん片脚立ちはできましたか。将来走れる身体を維持するためには片脚立ちでの支持性やバランスがとても大切になります。

そのためには普段の生活の中で片脚立位になる時に身体の状態を意識できているかということです。

いつも同じ側の足で片脚になっていることが多い場合は反対の足でも意識して片脚になる時間を作ることがとても大切です。そうすることで左右のバランスが整いやすくなります。

今一度私生活を見つめ直してみましょう。

本日もご覧いただきありがとうございました。

理学療法士として回復期病院6年、整形外科クリニック8年勤務し、日々多くの方のリハビリや身体の不調に向き合ってきました。

その中で「予防・セルフケア」の大切さを実感し、STOTT  PILATES認定Fullインストラクターの資格を取得し理学療法士をしながらピラティスインストラクターとしても9年活動しております。

今では内臓ストレッチマスタートレーナー、BODY  CONTROL  PILATES認定産前・産後インストラクター、pifilAtes認定インストラクターとしても活動し身体の内側から整えるケアもお伝えしております。

このブログは医療とピラティス両方の視点から『身体が変わるヒント』をお届けしています。

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