現役理学療法士解説。手の親指が痺れる原因と対処法について。

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はじめに

皆さんは身体のどこかに痺れを感じたことは必ず一度はあると思います。

その中でも手指に痺れを感じたことを経験したことがある人は意外と多いと思います。

手指は5本ありますが、すべて同じ神経ではなく、いくつかの神経に分かれて手指の感覚を司っています。

そのため、どの指が痺れているのかを理解することで対処できることがたくさんあります。

そこで今回は手指の中でも親指が痺れる時の原因と対処法についてお話ししたいと思います

手の親指の感覚に作用する神経

手の親指の感覚を司るのが正中神経になります。こちらの神経は親指だけではなく、示指や中指、環指の内側半分までの感覚を支配しています。また前腕部を回内させたり、手関節や手指を曲げる作用もあります。そのため、この正中神経に問題が生じると前腕部から手部にかけての機能障害をきたすことになります。

他にも腕の痺れについてまとめていますので、ぜひこちらの記事もご覧ください。

正中神経の絞扼部位

正中神経は上腕神経叢という神経の塊からはじまり、最終的に前腕の中央を走行する神経になります。そして正中神経は筋肉の間を走行するため、特定の部分で絞扼しやすいという特徴があります。

そのため、正中神経の絞扼障害が起きやすい部分についてお伝えしたいと思います。

上腕二頭筋腱膜

上腕二頭筋の起始・停止

起始                                               長頭:肩甲骨の関節上結節                                          短頭:烏口突起

停止                                                   橈骨粗面                                               上腕二頭筋腱膜

上腕二頭筋は主に肘の曲げ伸ばしに作用する筋肉になります。腕の力こぶにあたる筋肉がこの上腕二頭筋になります。

この上腕二頭筋の中で停止部にあたる上腕二頭筋腱膜の部分で正中神経が絞扼しやすいとされております。上腕二頭筋腱膜は上腕二頭筋が最終的に尺骨側の筋肉の表層を覆うように付着する膜になります。この膜の下方に正中神経が走行していくため、上腕を過剰に使用することで上腕二頭筋の緊張が高まるとこの正中神経を絞扼することがあります。

円回内筋

円回内筋の起始・停止

起始                                                 上腕骨内側上顆                                           尺骨鈎状突起の内側

停止                                                 橈骨中央よりやや近位の外側

円回内筋は前腕の回内運動に作用する筋肉になります。

この円回内筋は起始部が上腕骨内側上顆と尺骨の鈎状突起の二頭から起始する特徴があります。

そしてこの2頭の間を正中神経が走行しているため、手指や前腕部を過度に使用することで円回内筋の緊張が高まり起始部で正中神経を絞扼することがあります。

横手根靭帯(屈筋支帯)

手関節には正中神経が通るトンネルがあり、その部位を手根管といいます。この手根管を形成するのが手根骨と横手根靭帯(屈筋支帯)になります。

そして何らかの原因によってこの手根管が狭くなり正中神経を圧迫することで正中神経の絞扼性障害を引き起こすことがあります。そしてこれを別名『手根管症候群』といいます。

手掌にも痺れがある場合

手の痺れがあるとまず疑うのが手根管症候群になります。そのため、手根部に注射をしたり外科的に処置をしたりすることがありますが、ここで一つ注意するのが痺れが手指だけではなく手掌部にもあるかどうかを確認することです。

その理由として屈筋支帯の中を通過する正中神経は主に手指の感覚は司りますが、手掌部の感覚を司る正中神経の掌枝は前腕遠位部で正中神経から分岐して屈筋支帯の上部を通過して手掌部へと走行します。

そのため、掌まで痺れを感じる場合は手根管症候群ではなく、もっと近位の部分で正中神経を絞扼している可能性が高いということになります。

指の痺れを改善するセルフエクササイズ

それでは正中神経由来の痺れが生じた時のセルフケアの方法についてお話ししたいと思います。

今回は上腕二頭筋腱膜、円回内筋、手根管のセルフケアについて説明したいと思います。

上腕二頭筋腱膜のセルフケア

まず上腕二頭筋は力こぶの筋肉になるため比較的触りやすい筋肉になります。

まず前腕を回外させた状態で肘を曲げてみます。すると力こぶがでると思います。力こぶがでたら尺骨側(小指側)の筋腹をつまみます。

上腕二頭筋腱膜をつまんだ状態でゆっくりと肘を曲げ伸ばしします。すると上腕二頭筋の滑走性が高まり、絞扼部位の柔軟性を高めることができます。

円回内筋のセルフケア

まず前腕外側にある筋腹(腕橈骨筋)の内側と円回内筋の境目に指を置きます。触診では少し前腕中央部に窪んでいる部分があるのでそこが目印になると思います。

円回内筋は上腕骨内側上顆と尺骨鈎状突起から橈骨中央よりやや近位部に向かって走行しています。また腕橈骨筋の深層部に向かって走行するため、その斜めの走行をイメージして円回内筋の筋腹をつまみます。

円回内筋をつまんだらその状態で前腕をゆっくり回内外しながら動かしていきます。

手根管のセルフケア

手根管を形成する手根骨の配列は中央部分が窪んでおり、左右の手根骨が高い位置に配列されています。そしてその窪んだスペースに筋肉や神経が走行している状態になります。

そのため、左右の手根骨をやや内側に向かってつまむように把持します。すると手根部中央の窪んだスペースを広げることができます。

手根部のスペースを広げたらその状態で手指の曲げ伸ばしを行います。すると手根管内を走行する筋肉の滑走性が高まり、正中神経の絞扼を軽減することができます。

最後に

皆さんいかがでしたでしょうか。

親指の痺れは正中神経由来の問題だということを少し理解しておくだけでも、いざというときに自分で対処できることが増えます。

身体の構造は複雑ですが、意外と知っているか知っていないかの違いでその後の経過も変わってきますので、これからも皆さんの健康に役立つ情報発信をしていきたいと思います。

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