はじめに
だんだん歳を重ねると小走りが苦手になりますよね。
例えば横断歩道を急いで渡ろうとするときなんかにそう感じることがあるのではないでしょうか。高齢になるにつれ歩行機能は低下しますが、それ以上に走行機能はもっと低下している方が多いと思います。
なんか学生の時よりも走るとすぐに疲れるようになった気がするな。
普段から身体を動かしていないと若いときでも走行能力は低下するんだよ。
人は年齢を重ねるごとに下半身の筋力が衰え、徐々に移動能力が低下していきます。そして以下のようなことが当てはまる方は特に下半身の安定性が落ちている可能性があります。
そこで今回は下半身の筋力に大きく関係する片脚立位の安定性の確かめ方と良くない片脚立位の取り方の特徴についてお伝えしたいと思います。
軸の安定性の重要性について
身体の軸が安定しているだけで何か動作をした時や、同じ姿勢でずっといるときでも身体にかかる負担が軽減します。反対に軸が安定していないと、関節は動き過ぎてしまうところと動きにくいところが生じ、結果的にどこかの部位に集中して負担がかかりやすい状態となります。
軸の安定性を考える中で特に重要となるのは動作を伴うときです。人間は必ず移動するときに歩行もしくは走行により移動します。
そのため、
下半身と上半身をつなぐ軸が安定していることは移動能力にも大きく影響を与えます。
歩行と走行の違いとは
皆さんは歩行と走行の違いはご存知ですか。勘違いされやすいのがスピードの違いで区別しているという考え方ですが、これは間違いです。
歩くのと走るので決定的に違うのはスピードではなく左右の足の接地の仕方になります。
歩行の時は両脚が地面に接地している時間がありますが、走行の場合は終始片脚での接地となります。これは競歩のルールの元にもなっています。
いつまでも走れる身体を作るには
冒頭でも述べましたが年齢が高くなるほど小走りができなくなる方が増えてきます。
するとちょっとした移動も車を使うことが増え、より一層下半身の力が衰えてしまいます。
そこでいつまでも走るために必要になる大事なポイントは片脚で体重を支持する能力を高めることにあります。
つまり片脚で安定して立てない方は走行能力が低下している可能性があります。
効率よく走るためには骨盤の位置がとても重要になります。興味のある方はぜひご覧ください。
リハビリでも使う片脚立位評価
片脚立位の評価は、運動器不安定症のリスクや転倒のリスクを判断するために活用されますが、これらを判断するための指標となるカットオフ値をご存知でしょうか。
片脚立位は、簡易的に測定できるため高齢者の身体機能の評価として幅広く活用されています。
そのためカットオフ値や平均値も様々なものが公表されています。そのなかでも私のような理学療法士が良く使用するものがこちらになります。
⑴開眼片脚立位では「15秒未満」で運動器不安定症のリスクが高まる
⑵閉眼片脚立位では「5秒以下」
開眼片脚立位では「20秒以下」で転倒リスクが高まる
(参考文献:PTジャーナル 2009,9 高齢者の運動機能と理学療法)
一度片脚立ちが現時点でどのくらいできるのかぜひチャレンジしてみましょう。
日常生活で片足の支持を必要とする場面
片脚立位は走るときだけではなく、日常生活の中でも無意識に必要になる場面があります。
例えば私の場合はズボンを履くときや洗濯ものを敷居をまたぎながら干したりするときなどよく片脚立ちになります。
また足が汚れたくないときはつま先で立ちながら片脚で踏ん張る場面も生活の中で多いと思います。
このようなときにバランスを崩さずにできているか一度思い出してみましょう。
正しい片脚立位の姿勢
それでは一度片脚立ちをやってみましょう。
正しい片脚立ちのポイントはこちらになります。
・左右の肩の高さが同じ高さにあるか
・支持している側の足の直上に頭部の中心があるか
一度片脚立ちになったときにこの2つのポイントができているか確認してみましょう。
そして、この片脚立ちができると下半身と上半身の軸がつながり、関節の安定性が高まります。
片脚立ちが安定しない人の代償動作
片脚立ちをする際に
筋力が弱い
関節の可動域に制限がある
身体のどこかに痛みがある
といった問題が生じた場合、正しい片脚立ちではなく誤った姿勢で片脚立ちをする可能性があります。
すると先程述べた片脚立位評価において、いくら定められた時間片脚立位が保持ができたとしても、正しくない片脚立位ではできない方と同様将来的に歩行や走行に影響を及ぼす可能性があると私は考えています。
そのため、正しくない片脚立ちのパターンを今からお伝えしたいと思います。自身の片脚立ちと比較してみてください。
支持した足と反対に身体が傾く
こちらは上半身が左に側屈した状態の片脚立位になります。
すると左側の体幹がつぶれてしまい下半身と上半身の軸のつながりが不安定な状態となります。
そしてそれを代償するために右の脇腹から大腿外側の負担が増加します。
これは右の股関節外側に付着する中殿筋が弱いことが影響しています。
支持した足と同側に身体が傾く
こちらは上半身が右に側屈した状態の片脚立位になります。図の●が右股関節の位置になります。
すると右側の体幹が短縮し下半身と上半身のつながりが不安定な状態となります。また支持側の股関節に荷重がかかり過ぎてしまうため股関節の負担が増加します。
支持した側に身体が回旋する
こちらは身体を右に回旋(捻じる)した状態での片脚立位になります。
この片脚立位は骨盤を右に回旋することで右脚外側から殿部にある筋肉や靭帯の緊張を高め安定性を得ています。そのため、こちらの片脚立位は右脚外側から殿部にある筋肉に負担が増加します。
下半身が左右に動揺する
こちらは片脚立位になったときに下半身が左右に動揺する状態です。動揺する原因としては下半身(股関節・膝関節・足関節)のどこかに不安定性があることが考えられます。こちらの場合も下半身の不安定性のある部分に負担がかかりやすい状態となります。
骨盤が外側にシフトする
こちらは支持する側の骨盤を過度に外側にシフトした片脚立位となります。
この片脚立位は骨盤を外側にシフトすることで股関節外側にある筋肉にもたれかかるようにして安定性を得ています。そのため、この片脚立位では股関節外側の筋肉に過度に負担がかかりやすい状態となります。
片脚立位が安定するための下半身と体幹の軸のつながりについてはこちらの記事にまとめてありますので、ぜひご覧ください。
自身の片脚立位を知ることは
自身の片脚立ちの特徴を知ることは片脚でどのように身体を支えているのかが分かるということです。
つまり、歩行時や走行時の片脚立ちになるタイミングでどこに負担がかかっているのかを予想することができます。
普段から決まった部位に痛みがある、よくこの部位が疲れるという認識がある方はもしかして片脚の支え方が影響しているかもしれません。
そのような方は良い片脚立ちができるように練習してみましょう。
練習の際は支持側を壁に寄せながら練習すると身体の軸を意識しやすくなります。
片脚スクワットはできますか
走行能力に必要な片脚支持の安定性を確かめる方法として片脚スクワットがあります。
片脚スクワットがしっかりできる方は現段階で片脚支持の安定性は保たれていると思います。
片脚スクワットができない、もしくはふらつきがあったり、膝が内側に入ってしまうという方は片脚支持に不安定性がある可能性があります。
まず胸の前に両手を置き、片脚立ちになります。
片脚立ちの状態で体幹を少し前傾させながら股関節と膝を曲げていきます。
片足スクワットの時に膝とつま先が同じ方向をしっかり向いているかを確認してみましょう。
膝がまっすぐなのか、内側なのか分かりにくいという方は膝にあるお皿がどっちを向いているのかをみることで膝の向きが分かると思います。
最後に
皆さん片脚立ちはできましたか。将来走れる身体を維持するためには片脚立ちでの支持性やバランスがとても大切になります。
そのためには普段の生活の中で片脚立位になる時に身体の状態を意識できているかということです。
いつも同じ側の足で片脚になっていることが多い場合は反対の足でも意識して片脚になる時間を作ることがとても大切です。そうすることで左右のバランスが整いやすくなります。
今一度私生活を見つめ直してみましょう。
本日もご覧いただきありがとうございました。
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